御池沼沢の植物
問い合わせ番号:15280-7799-7307 更新日:2019年 11月 11日
御池沼沢植物群落では、さまざまな植物たちが四季折々に花を咲かせ、実をつけ、野鳥が羽を休めています。御池沼沢にどのような植物が生育しているか紹介します。
2大スター
御池沼沢が国の天然記念物に指定された理由の1つに、「ヤチヤナギ」と「ミクリガヤ」の存在があります。寒地性の植物であるヤチヤナギは、沼沢の西端に湧き出る水の温度が低いことから生育環境が維持され、南限分布域となっています。一方、暖地性の植物であるミクリガヤは、かつては西端からの湧水が東に流れるにつれ温められ、現在の東部指定地で生育し、ここ御池沼沢が北限となっています。このように、寒地性の植物と暖地性の植物が、現在は2つに分かれてしまいましたが、同じ沼沢の中で生育していたことはとても珍しいことなのです。この「ヤチヤナギ」と「ミクリガヤ」は、御池沼沢の2大スターといっても過言ではありません。
【ヤチヤナギ】 |
ヤチヤナギは、北方の湿原に生える落葉小低木です。高さは30cm~60cmくらいで、材はごく柔らかい。葉の質感は薄めで、よく見ると油点(半透明の小さな点)が散在しています。油点から独特の香りが微かにあり、レモンに似た甘い香りがします。 御池沼沢では、西部指定地の北側観察路、中央観察橋北側周辺で見られます。 |
【ミクリガヤ】 |
亜熱帯から暖地に生える暖地性植物で、御池沼沢が日本の北限とされています。多年性草木で、草丈50~90cm、葉は幅5~8mm、栗のイガのような頭状花序が2~5個茎の上部の葉腋(葉と茎の間)につくのが特徴です。 御池沼沢では、東部指定地東側観察橋の下で見られます。 |
御池沼沢に住む食虫植物たち
御池沼沢が国の天然記念物に指定された2つ目の理由に、食虫植物の存在があります。本来湧水湿地は、弱酸性・貧栄養の環境にあります。そのため、湧水湿地に生育する食虫植物たちは、栄養を他の生物から摂取しなければなりません。御池沼沢に住む「トウカイコモウセンゴケ」「ミミカキグサ」は、何とかして生物を捕らえているのですが、さて、どのように生物をGETしているのでしょうか(詳しくは、下を読んでね)。
しかし現在では、水量の不足、里山の荒廃等の影響を受けて、弱酸性、貧栄養という湿地環境が失われつつあり、これらの植物も生存の危機に面しています。
【トウカイコモウセンゴケ】 |
コケという名前がついていますが、種子植物です。ミズゴケなどが育つ湿地に生育する背の低い草で、地面から葉を放射状に伸ばします。円形の葉の一面に長い毛があり、その先端から甘い香りのする粘液を出します。この液につられてやってきた虫がくっつくと、粘り気のある毛と葉が虫を包むように曲がり、消化酵素の働きで分解・吸収します。トウカイコモウセンゴケは薄いピンク色の花を咲かせます。また、白い花を咲かせるモウセンゴケという植物もいます。 |
【ミミカキグサ】 ※他にも、ホザキノミミカキグサ・ムラサキミミカキグサがあります。 |
ミミカキグサは湿地に生育する小型の植物で、茎は泥の表面近くを横に走り、地上部に小さなヘラの形をした葉をつけています。薄い葉は湿った地表に張り付いています。茎から泥の中に地下茎をのばし、この地下茎や葉に捕食嚢をつけ、ミジンコなどのプランクトンをつかまえます。 花は7月から9月にかけて、高さ10cmほど伸ばした花茎の先端に、黄色い花をつけます。唇のような形の花で、花が咲いたあと、がくが残って実を包み、その姿が耳かきに似ています。 |
東海地方固有のシラタマホシクサの群落
御池沼沢が国の天然記念物に指定された3つ目の理由は、シラタマホシクサの存在です。シラタマホシクサは、東海地方固有の植物で、ここ御池沼沢に群生しています。かわいいですよね。
【シラタマホシクサ】 |
湿地に生育する一年草。多数の小さな花から成る頭花がほぼ球形で色が白いため、「白玉星草」の名前の由来となりました。頭花はよく見ると金平糖の表面のようにでこぼこしているため、別名でコンペイトウグサ「金平糖草」とも呼ばれています。 御池沼沢では、観察路北側入り口付近と北側観察橋の湿地で見られます。 |
御池沼沢を彩る植物たち
この他にも、御池沼沢にはたくさんの植物が生育しています。御池沼沢ならではの湿地で生きる植物を紹介します。
【ヘビノボラズ】 |
ヘビノボラズの名前は、鋭いトゲがあってヘビが登れないということからきています。落葉の小低木で、高さは50cm前後で、枝に花が総 (ふさ) の形で並んでいます(総状花序という)。5月に黄色い花をつけ、果実は球形から楕円形で赤く熟します。 御池沼沢では、西部指定地の北側観察橋でよく見られます。 |
【ノハナショウブ】 |
北海道から九州の湿原あるいは湿性の草原に生育する多年草。ハナショウブの原種で、5月から6月にかけて高さ1m前後の花茎を形成し、濃い紫色の花を咲かせます。花びらの基部に黄色い筋が入るのが特徴です。 御池沼沢では、東部指定地の給水路両側の湿地に多く見ることができます。 |
【トキソウ】 |
北海道から九州、朝鮮半島、中国にも生育しています。5月頃に植物名の由来となったトキ色(淡いピンク色)の花を咲かせます。花茎の高さは10~30cmぐらいで、葉の長さは15cmほどです。 御池沼沢では、西部指定地の中央観察橋周辺に群生しています。 |
【サギソウ】 |
本州から九州、台湾や朝鮮半島に分布する多年生の草木。夏、高さ20cmほどの茎の先に、シラサギをイメージさせる花をつけます。 御池沼沢では、西部指定地の中央観察橋周辺に群生しています。 |
【ノカンゾウ】 |
野原や溝の縁に生える多年草。7月から9月にかけて橙赤色の花を咲かせます。花は、朝咲いて夜にしぼむ1日花で、若葉は食用にされることもあります。 御池沼沢では、西部指定地に点在しています。 |
【カキラン】 |
日本から朝鮮半島、中国を原産とする湿原周辺に生育する多年草です。高さは30cmほどで、茎の上部に5~15個の花をつけます。6月ごろに柿色の花を咲かせます。花の色が柿の実の色に似ていることから名付けられています。 御池沼沢では、西部指定地の中央観察橋西側で見られます。 |
【ナガボノアカワレモコウ】 |
日本各地をはじめ、朝鮮半島や中国に分布しています。8月から10月ごろに、枝先に円柱状の花序を出し、紅紫色の花を咲かせます。 御池沼沢では、東部指定地の湿地、西部指定地の観察橋沿いで見られます。 |
御池沼沢では抑制すべき植物たち
会社帰り、学校帰りに通る普段の道や、散歩道で生えている植物たちの中には、残念ながら御池沼沢では、生育を抑制したり駆除したりしなければいけない植物もあります。なぜなら、それらの植物が御池沼沢で繁殖することによって、せっかくの湿地が陸地化・森林化してしまったり、湿地性植物が絶滅してしまったりするからです。御池沼沢では、靴裏の土を落としてから入ってもらったり、犬などの小動物を入れたりしないよう協力を求めています。
【群生により、他の湿性植物の生育を抑制するヨシ】 |
御池沼沢の抑制すべき植物 |
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