四日市市 人権教育・啓発基本方針 策定にあたって
問い合わせ番号:10010-0000-0387 更新日:2017年 4月 1日
1 四日市市人権教育・啓発基本方針策定にあたって
策定の経緯
21世紀は「人権の世紀」といわれています。これには、20世紀に起こった二度の世界大戦の苦しい経験や今も続いている宗教や民族の対立による内戦などの反省に立ち、すべての人の幸福が実現する平和な時代にしたいという願いが込められています。
1948(昭和23)年の国際連合の「世界人権宣言」以来、「国際人権規約」等の幾多の条約のもと、すべての人の人権が尊重される社会の実現を目指して、国際的なさまざまな取り組みが行われてきました。そして、国連は、1995(平成7)年より「人権教育のための国連10年」として、世界の国々に「人権教育」に関する積極的な取り組みを呼びかけました。つまり、人権問題の解決は国際的かつ普遍的な課題であります。
世界の動きから日本に目を向けると、人権尊重を基本原理とする日本国憲法のもとに さまざまな経緯を踏まえながらも、人権尊重の考え方は広く浸透してきました。しかし、憲法施行後50年以上を経過した現在でも、同和問題などの不当な差別は未だに解消されておらず、多くの課題を残しています。加えて、国際化、ボーダーレス化の進展、社会の複雑化、個々人の権利意識の高揚、価値観の多様化等に伴い、従来あまり問題視されなかった分野においても各人の人権が強く認識されるようになってきたことから、新たな視点に立った人権教育・啓発の必要性も生じてきています。
そうした状況のなかで、2000(平成12)年12月には「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が施行されました。そこには、「地方公共団体は、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有し」、「国民は、人権が尊重される社会の実現に寄与するよう努めなければならない」と、今後の人権教育・啓発の重要性が示されました。
本市は、1974(昭和49)年10月に「四日市市同和教育基本方針」を策定し、同和教育及び啓発の推進を図ってきました。そして、1992(平成4)年12月に人が人として尊ばれる明るく住みよい社会づくりを目指して「人権尊重都市」を宣言しました。1997(平成9)年6月には「四日市市部落差別をはじめとするあらゆる差別を無くすことを目指す条例」を制定し、「一人ひとりの個性を重視し、人権を尊重する社会」の実現に向けて努めてきました。
しかしながら、上述したような新たな人権課題や、差別的な考え方やそれを支える社会制度や慣習が依然として存在しています。そうした状況を踏まえ、さまざまな人権問題の解決を図るための人権教育や啓発は、市民一人ひとりの意識や価値観に問いかけ、行動につなげる必要があります。それぞれのライフステージで人権尊重の心を育て、人権意識を醸成し確立していくことが重要です。市民一人ひとりが主役となり、公平で公正な開かれた市民社会にしていかなければなりません。
以上の経緯を踏まえ、2002(平成14)年3月には「人権教育のための国連10年四日市市行動計画」が策定され、さらに「四日市市人権教育・啓発基本方針」をここに策定し、今後の四日市市の人権教育及び人権啓発の方向性を提示します。
人権に関する現状と課題
わたしたちが住んでいる社会にはさまざまな人権問題が存在しています。
同和問題に関するものとして、結婚や就職に際して根強く残っている差別意識や差別事象など。女性に関するものとして、女性に対する差別や偏見、社会活動や家庭生活における固定的な役割分担など。
子どもに関するものとして、いじめ、不登校、体罰、虐待など。
高齢者に関するものとして、家庭や施設における身体的拘束などの人間としての尊厳を侵すような行為など。
障害者に関するものとして、道路の段差などの物理的なもの、制度的なもの、差別や偏見などの心理的なもの、情報伝達の不十分さなど円滑な生活をさまたげる多くのバリアの存在、また、障害者の自立や人権が保障されていない問題など。
外国人に関するものとして、民族や国籍などによる就労条件や入店・入居拒否などの差別、本名を名乗る不安などの問題など。
ハンセン病の患者等に対しては、隔離を必要としないことが明らかになったにもかかわらず、偏見から入居拒否や日常生活における差別の問題など。HIV感染者に関するものとして、日常生活や職場・医療現場での差別など。
アイヌ民族に関するものとして、無理解からくる偏見や結婚、就職に際しての差別など。刑を終えて出所した人に関するものとして、社会復帰に際しての就職や入居差別などがあります。
また、前述したような個別の人権課題は人により複合的に存在し、より複雑で深刻な状況を作り出しています。そして、その家族への人権侵害という形で現れることも少なくありません。
このように、今なお人権に関する問題が多く存在する理由としては、わたしたち一人ひとりが人権尊重の理念や人権に関する知識を十分に理解していないことや、行動規範として身についていないことによるほか、物事を合理的に判断する力が十分に備わっていないことなどがあげられます。そして、こうした背景には、わたしたちのなかにみられる同質性・均一性を重視する傾向や、非合理な因習的な考え方、物の豊かさのみを追い求める風潮や人間関係の希薄化などがあると思われます。
本市においてのこれまでの人権教育・啓発は、主に学校教育及び社会教育において行われてきましたが、地域のリーダーや行政職員、教職員のような指導的立場にあるべき人のより高い認識・知識・技能が求められることを踏まえると、ともすると知識を一方的に教えることにとどまったりしたことなど、その指導方法や指導者の資質の問題が指摘されています。また、教育・啓発の内容、手法が必ずしも児童・生徒や市民の興味や関心を呼び起こすものになっていないことや特に社会教育においては、実施主体間相互の連携不足や活動があまり知られていないなどの問題等が指摘されています。
現在は、そうした従来からの課題や成果を踏まえて、新しい時代、新しい社会のあり方を模索していくことが求められている時代でもあります。人権と民主主義のための教育それ自体が人権であり、人権・民主主義・社会正義が実現される前提として不可欠なものであることから、まさに人権教育・啓発自体が、平和や民主主義を充実させていく重要なプロセスとして、継続的に推進される必要があります。
したがって、人権尊重をいっそう身近な文化にし、だれもが等しく尊重される社会を実現していくために、人権教育・啓発をこれまで以上に全市的に取り組まなければなりません。
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